空手バカ一代50周年!人生で大事な事はゴッドハンドに学んだ!

今年は『空手バカ一代 連載開始五十周年記念』との事で、TOKYO MXでなんとアニメの再放送が行われています。若い方はあまりご存じないかもしれませんが、空手バカ一代とは極真空手の祖、大山倍達先生の伝記マンガで、特攻隊の生き残りの大山倍達先生がどのように極真空手を生み出し、ゴッドハンドと呼ばれるまでになったかが、数々の武闘家との闘いを中心に描かれており、読みだしたら止まらないほど面白いマンガです。また、単なるバトルマンガではなく、弟子を育てる中での苦悩や人間的な成長過程も描かれており、「ヒーローではなく等身大の人間としての大山倍達」が丁寧に描かれています。

ところがです!このマンガは全て真実だというような描き方がされていたのですが、なんと割(一説によると割)が原作者の梶原一騎の創作だったらしく、まだ人を疑うことを知らない頃の私はそれを聞いてかなりショックでした。アメリカの空手の覇権を争った香港カンフーの李青鵬(り せいほう)に至っては、お互いを憎みながら死力を尽くして闘った後、「我々はお互いを先生と呼び合う仲になった」とか書いてあるにもかかわらず「架空の人物」だったそうで、まんまと騙されました。

「うまい嘘のつき方を知っとるか?嘘の中に時折真実を混ぜて話すことじゃ」(進撃の巨人 ピクシス司令)

これを書きながら、そんなセリフを思い出しました。とはいえ今読んでも抜群に面白いので、創作と判って読むのも一興です。さて、そんな空手バカ一代ですが、むしろ大山先生自らの著書の方が、違った意味での先生の魅力が濃縮されて伝わってきます。今回はそんな著書を品質管理部よりご紹介させていただきます。

①「世界ケンカ旅」

実録空手バカ一代ともいえる本書。空手バカ一代にも描かれた「大山倍達が一歩も動けずに負けた」太極拳の陳老人も登場し、それまで直線的な動きをしていた大山空手に太極拳の円の動きを取り入れるよう指南するシーンも出てきます。他にもさぞかし日本や世界を修行や興行で旅した先での激闘の記録がいっぱい記載されている、と思いきや、半分近く「どこの旅先で現地の女性をこう口説いた。…」のような内容で。。しかしながらさすが大山先生!ケンカも色好みも人生において大事だということを教えて頂きました!

②「マス大山の正拳一撃」

雑誌「パワー空手」に連載されていた人生相談。人生相談本はその人の人生観が如実に表れるので、とても面白いものが多いのですが、中でもこの本はその中でもぶっちぎりで面白い。内容をザックリ書くと。

「いじめにあっています。どうすればいいですか」「キミィ、極真空手をやりなさい!」

「彼女ができません。どうすればできますか」「キミィ、極真空手をやりなさい!」

「むかつくやつが喧嘩を吹っかけてきます」「まず叩きのめしなさい!それには極真空手をやるのが一番です」

細かいところは違うと思いますが、だいたいこんなノリで、色々な悩みに対して八割がた「キミィ、極真空手をやりなさい!」という回答にもっていかれます。ある意味お約束的要素もあり、「この質問に対しても極真空手が有効なのか!」と思ったりするのですが、逆に受験の間も空手をやりたいと悩む受験生の相談者に「受験勉強が苦しいから武道に逃げるとするなら、もし武道が苦しければ、そこからも逃げる。そうすれば君には何も残らない。苦しさにぶつかり、そこを突破していくところに男の価値がある。今は勉強を大事にするべきだ」と、真剣に返答し、いつもと真逆の回答をすることも。毎回真剣勝負がごとく自分の生きざまをぶつけてくる回答は、まさしく人生の悩みを正拳の一撃で砕いていくような痛快さで、人生で何が大事かを教えてくれる永遠の名著です。

③「大山カラテ もし戦わば」

現場作業をする人は「KY活動(危険予知活動)」というのをやる機会が多いと思います。これは現場に入る前に、あらかじめその作業の危険と思われる項目、事故を誘発しそうな事例を挙げ、それに対して事故を予防するための措置や事故が起こったらどう対処するかをまとめて記載して周知する活動なのですが、この本はある意味、究極のKY本ではないかと思います。まず、危険予知として、「○○と戦うにはどのような危険があるのか」、「それらの危険にどのように対処して勝つか」ということをトコトン考えたのが本書なのです。しかもこの「○○」に入るものが「プロレスラー、ボクサー、中国拳法、ナイフ投げ、日本刀、ピストル」など、多岐の武器・武芸への対処が書かれており、我々も普段からこういった危険予知をきちんとしておかないと、いきなり道端でナイフ投げの達人に襲われた時に、きちんと対処することができません。そうやってあらかじめ用心する大事さを教えてくれるだけでなく、さらに虎やライオン、ヒョウ、ゴリラなどの猛獣と戦う時にどうするか、ということまで教えてくれます。ペットの蛇が逃げたり、外来種のカミツキガメに河で襲われるご時世です。我々もいつ松島トモ子さんの様にライオンに襲われても不思議ではありません。そこまで突き詰めて考えることが大事なのだとこの本を見ていると思ってしまいます。

なんにせよ仕事でも趣味でも、「それについてどれだけ考えたか」ということはとても重要で、「状況に満足せず、常に自分に降りかかる困難についてあらかじめ考え抜き、対処を考えておく」ことが、何か起こった時にきちんと対応出来るようになる近道だということを教えて頂きました。ただ、現在の私がそこまで考えているかというと疑問ではあるのですが…。

今回紹介させていただいた本は、いずれも絶版ですが、ネット通販で今でも中古が入手できるようですので、興味のある方は是非ディープなマス・オーヤマの世界に浸っていただければと思います。きっと極真空手をやってみたくなりますよ。